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著名な俳句の検索
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  対象8607件  [1/9]     俳句メニュー

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作品番号 作者  俳句説明
 1 山口誓子  筍の天鵞絨の斑の美しき 天鵞絨:ビロード 斑:ふ
 2 山口誓子  たかんなの土出でてなほ鬱々と 
 3 河東碧梧桐  春寒し水田の上の根なし雲 
 4 松本たかし  又一つ病身に添ふ春寒し 
 5 村上鬼城  春寒やぶつかり歩く盲犬 
 6 中村汀女  春寒やすぐ手につきし焚火の香 
 7 阿波野青畝  手より落つ赤鉛筆や目借時 
 8 原石鼎  落椿を飛ぶ時長き蛙かな 落椿:おちつばき
 9 高野素十  鮭の子の下る八十八夜とか 
 10 西東三鬼  たんぽぽ地に張りつき咲けり飛行音 
 11 加賀千代女  風毎に葉を吹出すやことし竹 
 12 加賀千代女  わき道の夜半や明るく初さくら 
 13 加賀千代女  桃の日や花あとに成先に成 
 14 加賀千代女  ものの葉のまだものめかぬ余寒かな 
 15 加賀千代女  水影をくめどこぼせど朧月 
 16 加賀千代女  昼の夢ひとりたのしむ柳哉 
 17 加賀千代女  何になる空見すまして雲雀かな 
 18 加賀千代女  月の夜の桜に蝶の朝寝かな 
 19 加賀千代女  たんぽぽや折々さます蝶の夢 
 20 加賀千代女  鴬や椿落して迯て行 迯:にげ
 21 加賀千代女  閑かさは何の心やはるのそら 
 22 加賀千代女  うくひすやはてなき空をおもひ切 
 23 加賀千代女  仰向いて梅をながめる蛙かな 
 24 山口青邨  病室のわれが名札や月あかり  
 25 山口青邨  開き見る忘扇の花や月 
 26 山口青邨  雪よりも白き雲来て雪かくす 
 27 山口青邨  朴落葉いま銀となりうらがへる 
 28 山口青邨  敗れたりきのふ残せしビール飲む 
 29 山口青邨  藻疊はよきや鴨たち雨の中 藻疊:もだたみ
 30 山口青邨  これよりは菊の酒また菊枕 
 31 山口青邨  わが心やさしくなりぬ赤のまま 
 32 三橋鷹女  田楽に酔うてさびしき男かな 
 33 三橋鷹女  棕梠の葉の氷柱房なす朝かな 
 34 三橋鷹女  萩枯れて頬白訪はずなりにけり 
 35 三橋鷹女  初冬のふたたび赤きカンナかな 
 36 三橋鷹女  花葛の淡き模様の秋袷 
 37 三橋鷹女  かたげこぼす壺の水より秋のこゑ 
 38 三橋鷹女  梅雨冷えや殻やはらかきかたつむり 
 39 三橋鷹女  あかねさす雲ゆるやかに山開き 
 40 三橋鷹女  梅雨冷えや一りん赤き花ざくろ 
 41 三橋鷹女  一むらのおいらん草に夕涼み 
 42 三橋鷹女  春愁ふ真珠の吾こをかたはらに 
 43 三橋鷹女  もみくちやに辛夷は吹かれ心吹かれ 
 44 三橋鷹女  高曇り蒸してつくつく法師かな 
 45 三橋鷹女  蝶とべり飛べよとおもふ掌の菫 
 46 三橋鷹女  ぶらんこを漕ぐまたひとり敵ふやし 
 47 三橋鷹女  雨風の濡れては乾き猫ぢやらし 
 48 三橋鷹女  つはぶきはだんまりの花嫌ひな花 
 49 三橋鷹女  千の蟲鳴く一匹の狂ひ鳴き 
 50 三橋鷹女  めんどりよりをんどりかなしちるさくら 
 51 三橋鷹女  顔よせて鹿の子ほのかにあたたかし 
 52 三橋鷹女  深追いの恋はすまじき沈丁花 
 53 三橋鷹女  春の夢みてゐて瞼ぬれにけり 
 54 上島鬼貫  秋風の吹きわたりけり人の顔 
 55 上島鬼貫  おもしろさ急には見へぬすすきかな 
 56 上島鬼貫  つくづくともののはじまる火燵かな 
 57 上島鬼貫  草麦や雲雀があがるあれさがる 
 58 上島鬼貫  ささ栗の柴に刈らるる小春かな 
 59 上島鬼貫  鶯の鳴けば何やらなつかしう 
 60 上島鬼貫  春の水ところどころに見ゆるかな 
 61 上島鬼貫  月花を我物顔の枕かな 
 62 宝井其角  豆をうつ声のうちなる笑かな 
 63 宝井其角  ちり際は風もたのまずけしの花 
 64 宝井其角  うぐひすや遠路ながら礼かへし 
 65 宝井其角  いなづまやきのふは東けふは西 
 66 向井去来  五六本よりてしだるる柳かな 
 67 向井去来  絵の中に居るや山家の雪げしき 
 68 向井去来  朝あらしあまたの上を渡り鳥 
 69 子規  酒買ふて酒屋の菊をもらひけり 
 70 子規  冷酒を飲み過しけり後の月 
 71 子規  酒のんで一日秋をわすれけり 
 72 子規  俳を談ず秋海棠の夕哉 
 73 子規  柿もくはで随問随答を草しけり 
 74 子規  芭蕉忌や吾に派もなく伝もなし 
 75 子規  虫鳴や俳句分類の進む夜半 
 76 子規  行く年の我いまだ老いず書を読ん 書を読ん:しょをよまん
 77 子規  手向くるや余寒の豆腐初桜 
 78 子規  鯛鮓や一門三十五六人 鯛鮓:たいずし
 79 子規  芭蕉忌に参らずひとり柿を喰ふ 
 80 子規  古書幾巻水仙もなし床の上 
 81 子規  夏痩をなでつさすりて一人哉 
 82 子規  月花の愚をしぐれけり二百年 
 83 子規  月並は何と聞くらん子規 子規:ほととぎす
 84 子規  渾沌をかりに名づけて海鼠かな 
 85 子規  内のチヨマが隣のタマを待つ夜かな 
 86 子規  涅槃像仏一人は笑ひけり 
 87 子規  正月の人あつまりし落語かな 
 88 子規  木のもとにふんどし洗ふ涼み哉 
 89 子規  やせ馬の尻ならべたるあつさ哉 
 90 子規  雞頭や不折がくれし葉雞頭 雞頭:けいとう 不折:ふせつ
 91 子規  秦々たる桃の若葉や君娶る 秦々:しんしん 漱石の結婚
 92 子規  芭蕉破れて書読む君の声近し 破れ:やれ 書:ふみ
 93 子規  人間ハマダ生キテ居ル秋ノ風 
 94 子規  栗飯ヤ病人ナガラ大食ヒ 大食ヒ:オオグラヒ
 95 子規  和歌に痩せ俳句に痩せぬ夏男 
 96 子規  日本派の句集に画く菫かな 画く菫:えがくすみれ
 97 子規  柿喰ヒの俳句好みしと伝ふべし 
 98 子規  病人ニ八十五度ノ残暑カナ 
 99 子規  今日は又足が痛みぬ五月雨 
 100 子規  立たんとす腰のつがひの冴え返る 
 101 向井去来  夕涼み疝気おこしてかへりけり 
 102 芭蕉  夕顔や酔てかほ出す窓の穴 
 103 上島鬼貫  雪で富士か不尽にて雪か不二の雪 
 104 一茶  吾庵は何を申すも藪わか葉 
 105 一茶  ゆうぜんとして山を見る蛙哉 
 106 一茶  山吹に差出口きく蛙哉 
 107 一茶  痩蛙まけるな一茶是に有 
 108 虚子  二人して綱引なんど試みよ 
 109 芭蕉  日の道や葵傾く五月雨 
 110 一茶  むくどりの仲間に入るや夕時雨 
 111 一茶  椋鳥と我をよぷ也村時雨 
 112 一茶  椋鳥と人に呼るゝ寒哉 
 113 一茶  三日月に天窓うつなよほととぎす 
 114 一茶  まだたのしまだ暑いぞよ三日の月 
 115 一茶  又ことし娑婆寒なる此身哉 
 116 一茶  又ことし娑婆寒ぞよ草の家 
 117 一茶  昼顔やぽつぽつと燃る石ころへ 
 118 一茶  昼顔やしほるゝ草を乗越乗越 
 119 一茶  昼顔やざぶざぶ汐に馴てさく 
 120 一茶  ひとらしく更へもかへけりあさ衣 
 121 一茶  人の世に花はなしとや閑古鳥 
 122 一茶  伴僧が手習す也わか葉陰 伴僧:ばんそう 阿闍梨(あじゃり)に随伴して読経などの役を行なう僧。また、一寺の住職に随伴する下級僧。番僧。
 123 蕪村  日の光今朝や鰯のかしらより 
 124 芭蕉  めでたき人の数にも入ん年の暮 
 125 芭蕉  水無月や鯛はあれども塩くじら 
 126 芭蕉  ひやひやと壁をふまへて昼寝哉 
 127 芭蕉  人に家を買せて我は年忘 
 128 芭蕉  ひいと啼尻声悲し夜の鹿 
 129 向井去来  花守や白きかしらを突あはせ 
 130 上島鬼貫  むかしとへば卵塔までの葉末かな 卵塔:らんとう 墓石の一種。座台の上に、卵形の石塔婆をのせたもの。
 131 上島鬼貫  又の月もあふのひてこそ甲斐はあれ 
 132 上島鬼貫  冬は又夏がましぢゃといひにけり 
 133 上島鬼貫  富士は雪は花一時のよしの山 
 134 上島鬼貫  春雨のけふばかりとて降りにけり 
 135 上島鬼貫  花の色はからびはてたる冬木立 
 136 蕪村  芭蕉去てそのゝちいまだ年くれず 
 137 上島鬼貫  野も山も昼かとぞ首のだるくこそ 
 138 上島鬼貫  ねられぬやにがにがしくも鳴千鳥 
 139 上島鬼貫  にょつぽりと秋の空なる不尽の山 
 140 上島鬼貫  なんと菊のかなぐられふぞ枯てだに 
 141 上島鬼貫  月代やむかしの近き須磨の浦 
 142 上島鬼貫  谷水や石も歌よむ山櫻 
 143 一茶  はつ雪やいろはにほへと習声 
 144 一茶  八兵衛や泣ざなるまい虎が雨 虎が雨:陰暦の五月二十八日に降る雨のこと。曾我兄弟の兄、十郎が新田 忠常に切り殺されことを、愛人の虎御前が悲しみ、その涙が雨に なったという言伝えに由来する。
 145 一茶  寝て起て我もつらつら椿哉 
 146 一茶  なはしろに蛙の鳴やときの声 
 147 一茶  なまけるないろはにほへと散桜 
 148 一茶  旅人に雨降花の咲にけり 
 149 一茶  竹ぎれで手習ひをするまゝ子哉 
 150 一茶  大帳を枕としたる暑かな 大帳:だいちょう 台帳 大福帳
 151 一茶  芝居迄降りつぶしたりけふの月 
 152 一茶  白髪同志春をゝしむもばからしや 
 153 一茶  叱てもしゃあしゃあとして蛙哉 
 154 一茶  ことしこそ小言相手も夏座敷 
 155 一茶  今年から丸もうけぞよ娑婆遊び 娑婆遊び:さばあそび もう一生分は生きてしまったのだから、これから先はおまけのようなもの、つらいことがあろうと悩みがあろうと命があるだけで丸儲け。
 156 一茶  五十婿天窓をかくす扇かな 
 157 一茶  小言いふ相手のほしや秋の暮 
 158 一茶  けろけろと師走月よの榎哉 
 159 一茶  けさ秋と云計りでも老にけり 
 160 上島鬼貫  此露を待て寝たぞや起たぞや 
 161 蕪村  底のない桶こけ歩行野分哉 歩行:ありく
 162 蕪村  時雨るゝや蓑買ふ人のまことより 
 163 金子兜太  夏の山国母いてわれを与太という 
 164 一茶  究竟の雨といふ也けふの月 
 165 一茶  けふの月我もむさしに往合 往合:すみあわせ
 166 上島鬼貫  そよりともせいで秋たつ事かいの 
 167 上島鬼貫  須磨に此吾妻からげやしほ衣 
 168 上島鬼貫  さつき雨たゞふるものと覚へけり 
 169 上島鬼貫  きかぬやうに人はいふ也郭公 
 170 上島鬼貫  蚊をよけて親の鼾や郭公 郭公:ほととぎす
 171 上島鬼貫  川越て赤き足ゆく枯柳 
 172 芭蕉  腰たけや鶴脛ぬれて海涼し 脛:すね
 173 芭蕉  象潟や雨に西施がねむの花 
 174 芭蕉  象潟の雨や西施がねむの花 
 175 芭蕉  かれ朶に鳥のとまりけり秋の暮 
 176 加賀千代女  若水や流るるうちに去年ことし 
 177 三橋鷹女  路地裏もあはれ満月去年今年 
 178 久保田万太郎  去年の月のこせる空のくらきかな 
 179 上島鬼貫  歩行ならば杖つき坂を落馬哉 
 180 上島鬼貫  かけまはる夢や焼野の風の音 
 181 上島鬼貫  おとゝしのから鮭買ふてやすいもの 
 182 上島鬼貫  鶯や音を入れて只青い鳥 
 183 上島鬼貫  あたゝかに冬の日南の寒き哉 
 184 上島鬼貫  あたゝかに冬の日なたの寒き哉 
 185 上島鬼貫  東路の夜露こふたる紙子哉 
 186 一茶  さぼてんを上坐に直ス冬至哉 
 187 一茶  我梅はなんのけもなき冬至哉 
 188 一茶  むつかしや今月が入寒が入 今月が入:いまつきがいる
 189 一茶  上白の一陽来たり梅の花  上白:かみしろ
 190 一茶  粥くふも物しりらしき冬至哉 
 191 一茶  おれとして白眼くらする蛙かな 白眼:にらみ
 192 一茶  姥捨た罪も亡んけふの月 亡ん:ほろびん
 193 一茶  大水や大昼顔のけろり咲 
 194 一茶  老の身は暑のへるも苦労哉 
 195 一茶  老が身は鼠も引ぬ夜寒哉 
 196 一茶  うす緑にぼりして逃る鳴蛙 
 197 一茶  いろはにほへとを習ふいろり哉 
 198 一茶  有合の山ですますやけふの月 
 199 一茶  暑き日やひやと算盤枕哉 
 200 一茶  暑き日に面は手習した子かな 
 201 一茶  あついとてつらで手習した子かな 
 202 一茶  ふしぎ也生た家でけふの月 
 203 一茶  名月や松ない島も天窓数 
 204 一茶  破壁や我が名月の今御座る 
 205 一茶  寝むしろも是名月ぞ名月ぞ 
 206 一茶  山里は小鍋の中も名月ぞ 
 207 一茶  名月や寝ながらおがむ体たらく 
 208 一茶  名月や草の下坐はどこの衆 
 209 一茶  仇藪も貧乏かくしぞけふの月 仇藪:あだやぶ
 210 一茶  秋立や雨ふり花のけろけろと 
 211 芭蕉  牛部やに蚊の声聞き残暑哉 
 212 芭蕉  あつみ山や吹浦かけて夕すゞみ 
 213 蕪村  うぐいすや家内揃うて飯時分 
 214 蕪村  いばりせしふとんほしたる須磨の里 
 215 蕪村  青梅に眉あつめたる美人哉 
 216 山口青邨  簪のゆれつゝ下る初詣 簪:かんざし
 217 山口誓子  折りし皮ひとりで開く柏餅 
 218 山口誓子  鯉幟風に折れ又風に伸ぶ 
 219 森澄雄  雪嶺のひとたび暮れて顕はるる 
 220 森澄雄  芭蕉忌の暮れて甘ゆる鳰のこゑ 
 221 森澄雄  はるかまで旅してゐたり昼寝覚 
 222 森澄雄  田を植ゑて空も近江の水ぐもり 
 223 村上鬼城  七夕やくらがりで結ふたばね髪 
 224 三橋鷹女  秋風や水より淡き魚のひれ 
 225 水原秋櫻子  羽子板市三日の栄華つくしけり 
 226 水原秋櫻子  雨ごもり筍飯を夜は炊けよ 
 227 松本たかし  秋晴の何処かに杖を忘れけり 
 228 松本たかし  羅をゆるやかに着て崩れざる 羅:うすらい うすもの
 229 松根東洋城  山からの雨潔き夏野かな 
 230 子規  押しあふて又卯の花の咲きこぼれ 
 231 星野立子  冬日和心にも翳なかりけり 翳:かげり
 232 蕪村  秋立つや素湯香しき極楽院 
 233 蕪村  涼しさや鐘をはなるゝかねの声 
 234 原石鼎  門松のやゝかたむくを直し入る 
 235 原石鼎  鹿二つ立ちて淡しや月の丘 
 236 原石鼎  雨ふくむ葉の重みして若楓 
 237 波多野爽波  川床つづくぽっかり開いてまたつづく 
 238 芭蕉  石山の石より白し秋の風 
 239 橋本多佳子  大綿は手に捕りやすしとれば死す 大綿:綿虫 雪虫、雪蛍、白粉婆
 240 橋本多佳子  濃き墨のかわきやすさよ青嵐 
 241 橋本多佳子  罌栗ひらく髪の先まで寂しきとき 罌栗:けし
 242 能村登四郎  今年より吾子の硯のありて洗ふ 
 243 能村登四郎  溝浚ひはじめての水ほとばしる 溝浚ひ:みぞさらい
 244 中村汀女  たちまちに蜩の声揃ふなり 蜩:ひぐらし
 245 中村草田男  あたたかき十一月もすみにけり 
 246 中村草田男  玫瑰や今も沖には未来あり 玫瑰:はまなす
 247 内藤鳴雪  爼に薺のあとの匂ひかな 爼:まないた 薺:なずな 
 248 富安風生  初富士の大きかりける汀かな 
 249 富安風生  夏山の立ちはだかれる軒端かな 
 250 富安風生  老鶯や珠のごとくに一湖あり 
 251 加賀千代女  落ち鮎や日に日に水のおそろしき 
 252 竹下しづの女  月代は月となり灯は窓となり 
 253 高浜年尾  溝蕎麦は水の際より咲きそめし 
 254 杉田久女  春繭や雨をふくみて薄みどり 
 255 芝不器男  麦車馬におくれて動き出づ 麦車:むぎぐるま 麦刈りの道具
 256 西東三鬼  鏡餅暗きところに割れて座す 
 257 西東三鬼  モナリザに仮死いつまでもこがね虫 
 258 西東三鬼  身に貯へん全山の蝉の声 
 259 西東三鬼  海から無電うなづき歩む初夏の鳩 
 260 山口誓子  春眠のわが身をくぐる波の音 
 261 山口誓子  紫が深まれば黒雨の菫 
 262 川端茅舎  亀甲の粒ぎっしりと黒葡萄 
 263 虚子  石段に一歩をかけぬ初詣 
 264 芭蕉  かたつぶり角ふりわけよ須磨明石 
 265 久保田万太郎  盆の月ひかりを雲にわかちけり 
 266 久保田万太郎  夏の月いま上りたるばかりかな 
 267 加藤楸邨  こけさまにほうと抱ゆる西瓜かな 
 268 加藤楸邨  山茶花のこぼれつぐなり夜も見ゆ 
 269 上田五千石  万緑や死は一弾を以て足る 
 270 蕪村  早梅や御室の里の売やしき 御室:みむろ
 271 蕪村  麦蒔や百まで生る貌ばかり 
 272 橋本多佳子  木の実独楽ひとつおろかに背が高き 
 273 西東三鬼  大寒や転びて諸手つく哀しさ 
 274 石田波郷  蝶燕母も来給ふ死に得んや 
 275 加藤楸邨  おぼろ夜のかたまりとしてものおもふ 
 276 虚子  五女の家に次女と駆け込む春の雷 
 277 飯田龍太  強霜の富士や力を裾までも 強霜:つよじも
 278 飯田龍太  六月の花のさざめく水の上 
 279 飯田龍太  山の木に風すこしある薄暑かな 
 280 飯田蛇笏  いんぎんにことづてたのむ淑気かな 淑気:しゅくき 新年の神々(こうごう)しい雰囲気
 281 飯田蛇笏  山中の巌うるほひて初しぐれ 
 282 飯田蛇笏  炎天を槍のごとくに涼気すぐ 
 283 阿波野青畝  にぎはしき雪解雫の伽藍かな 
 284 阿部みどり女  初鶏にこたふる鶏も遠からぬ 
 285 阿部みどり女  鉦叩風に消されてあと打たず 
 286 芥川龍之介  初午の祠ともりぬ雨の中 
 287 秋元不死男  跳ぶさまで止る聖夜の赤木馬 
 288 秋元不死男  豊年や切手をのせて舌甘し 
 289 秋元不死男  引く波に貝殻鳴りて実朝忌 
 290 長谷川かな女  冬さうびかたくなに濃き黄色かな 冬そうび:冬薔薇
 291 阿波野青畝  冬薔薇や青天井に蔓まげて 
 292 加藤楸邨  冬薔薇瞳によろこべりうつうつと 冬薔薇:ふゆそうび
 293 松瀬青々  蕪干せば冬の日低うなりにけり  
 294 山口青邨  赤蕪を一つ逸しぬ水迅く  
 295 石原八束  緋蕪菁を買ふ乳母車かたへにし  
 296 子規  画室成る蕪を贈つて祝ひけり  
 297 鈴木真砂女  梅雨寒く小蕪真白く洗はるゝ  
 298 原石鼎  太陽に黒点出来し蕪かな  
 299 中村汀女  土を出て蕪一個として存す 
 300 水原秋櫻子  佗助を挿すとて据ゑぬ蕪徳利 
 301 一茶  おく霜の一味付けし蕪かな 
 302 石田波郷  七夕竹惜命の文字隠れなし 
 303 一茶  春の月さはらば雫たりぬべし 
 304 阿波野青畝  よこたへて金ほのめくや桜台 
 305 中村草田男  そら豆の花の黒き目数知れず 
 306 長谷川素逝  菜の花の暮れてなほある水明り 
 307 右城暮石  蝌蚪生れ黒き塊まだ解かず 
 308 松本たかし  眼にあてて海が透くなり桜貝 
 309 秋元不死男  はるばると海よりころげきし栄螺 栄螺:さざえ
 310 中村汀女  部屋のことすべて鏡にシクラメン 
 311 石原八束  天平の仏にまみえ青き踏む 青き踏む:野遊び 一歩一歩進むという気分
 312 秋元不死男  せせらぎや駈けだしさうに土筆生ふ 生ふ:おふ
 313 一茶  春雨や喰はれ残りの鴨が鳴く 
 314 日野草城  きさらぎの藪にひびける早瀬かな 
 315 西東三鬼  垂れ髪に雪をちりばめ卒業す 
 316 大野林火  春山を出でくる川に堰いくつ 
 317 長谷川かな女  土筆野やよろこぶ母につみあます 
 318 飯田蛇笏  洟かんで耳鼻相通ず今朝の秋 洟:はな
 319 山口青邨  へつつひの煙にむせぶ梅の宿 へつつひ かまど はがま
 320 山口青邨  わが前に垂れて花あり枝垂梅 
 321 虚子  あたゝかや蜆ふえたる裏の川 
 322 日野草城  暮れそめてにはかに暮れぬ梅林 
 323 星野立子  仮住のなれぬ水仕や春浅き 水仕:みずし 台所で水仕事をすること
 324 久保田万太郎  淡雪のつもるつもりや砂の上 
 325 大野林火  物置けばすぐ影添ひて冴返る 冴返る:さえかえる
 326 金子兜太  鰯雲日かげは水の音迅く 
 327 山口誓子  虹の環を以て地上のものかこむ 環を以て:わをもって
 328 阿波野青畝  しづり雪誘ひさそはれ淵に落つ 
 329 石田波郷  春雪三日祭の如く過ぎにけり 
 330 黒田杏子  ひとはみなひとわすれゆくさくらかな 
 331 中村草田男  咲き切って薔薇の容を超えけるも 容:かたち
 332 金子兜太  被爆の人や牛や夏野をただ歩く 
 333 金子兜太  合歓の花君と別れてうろつくよ 
 334 金子兜太  老母指せば蛇の体の笑うなり 
 335 金子兜太  大航海時代ありき平戸に朝寝して 
 336 金子兜太  秋高し仏頂面も俳諧なり 
 337 金子兜太  妻病めば葛たぐるごと過去たぐる 
 338 金子兜太  春落日しかし日暮れを急がない 
 339 金子兜太  唯今二一五〇羽の白鳥と妻居り 
 340 金子兜太  どどどどと蛍袋に蟻騒ぐぞ 
 341 金子兜太  麦秋の夜は黒焦げ黒焦げあるな 
 342 金子兜太  朝寝して白波の夢ひとり旅 
 343 金子兜太  花柘榴の花の点鐘恵山寺 
 344 金子兜太  抱けば熟れいて夭夭の桃肩に昴 夭夭:ようよう
 345 金子兜太  麒麟の脚のごとき恵みよ夏の人 
 346 金子兜太  猪が来て空気を食べる春の峠 
 347 金子兜太  谷間谷間に満作が咲く荒凡夫 荒凡夫:あらぼんぷ 庶民ながら自由気ままに生きる人
 348 金子兜太  山国や空にただよう花火殻 
 349 金子兜太  人刺して足長蜂帰る荒涼へ 
 350 金子兜太  ぎらぎらの朝日子照らす自然かな 
 351 尾崎放哉  肉がやせて来る太い骨である 
 352 虚子  人形の足袋うち反りてはかれけり 
 353 波多野爽波  雪うさぎ柔かづくり固づくり 
 354 大野林火  城に灯が入りかまくらもともるなり 
 355 子規  人の手にはや古りそめぬ初暦 
 356 星野立子  元旦やいつもの道を母の家 
 357 松本たかし  みんなみの海湧き立てり椿山 
 358 星野立子  かげりたるばかりの道や落椿 
 359 渡辺水巴  我去れば水も寂しや谷の梅 
 360 星野立子  十年前亡くなりしとや人の秋 
 361 阿波野青畝  蜆舟国引のこの湖 
 362 水原秋櫻子  顔見世や名もあらたまる役者ぶり 
 363 富安風生  万両のほかに生家の記憶なし 
 364 金子兜太  林間を人ごうごうと過ぎゆけり 
 365 金子兜太  最果ての赤鼻の赤魔羅の岩群 
 366 金子兜太  無神の旅あかつき岬をマッチで燃し 
 367 金子兜太  男鹿の荒波黒きは耕す男の眼 
 368 芥川龍之介  労咳の頬美しや冬帽子 
 369 飯田蛇笏  死病得て爪美しき火桶かな 
 370 松本たかし  綺羅星は私語し雪嶺これを聴く 
 371 蕪村  うつゝなきつまみごゝろの胡蝶哉 
 372 西東三鬼  おそるべき君等の乳房夏来る 君等の乳房夏来る:きみらのちぶさなつきたる
 373 金子兜太  豹が好きな子霧中の白い船具 
 374 金子兜太  銀行員ら朝より蛍光す烏賊のごとく 
 375 金子兜太  朝はじまる海へ突込む鷗の死 
 376 金子兜太  人生冴えて幼稚園より深夜の曲 
 377 長谷川かな女  陽の篠のゆらぐ厄日の窓格子 
 378 長谷川かな女  青柿落ちる女が堕ちるところまで 
 379 長谷川かな女  芭蕉忌の紫苑ぐさりと剪り終る 
 380 長谷川かな女  面白くて笠をさすならげんげん野 
 381 長谷川かな女  ホテルの灯掴みて出でし夏手袋 
 382 長谷川かな女  舟虫に海女が置き去る藁草履 
 383 長谷川かな女  前掛が隠す総菜柿照葉 
 384 長谷川かな女  歎異抄に二月耐へゐぬうつ伏して 
 385 長谷川かな女  草の實に佇ちし二人が喜壽の今日 
 386 長谷川かな女  カンナ立ち廃兵いまだ巷にあり 
 387 長谷川かな女  夜の雪となる焼跡を通りすぎ 
 388 長谷川かな女  膝かけの下にかくすは恋慕の手 
 389 長谷川かな女  ママと書きママと書き月見草の夕 
 390 長谷川かな女  水中花菊も牡丹も同じ色 
 391 長谷川かな女  雪女郎添寝す笹のうすみどり 
 392 長谷川かな女  湯豆腐の一と間根岸は雨か雪 
 393 長谷川かな女  頂の瘤に雲這う富士遅日 
 394 長谷川かな女  残菊や一管の笛に執着し 
 395 長谷川かな女  ちちははの役をひとりに秋袷 
 396 長谷川かな女  西鶴の女みな死ぬ夜の秋 
 397 長谷川かな女  びしびしと枯枝折って天のあり 
 398 長谷川かな女  生れたる日本橋の雨月かな 
 399 長谷川かな女  牡丹みな崩るゝ強き日あたれり 
 400 長谷川かな女  冬そうびかたくなに濃き黄色かな 
 401 長谷川かな女  冬ざれて焚く火に凹む大地かな 
 402 長谷川かな女  呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉 
 403 長谷川かな女  龍膽の太根切りたり山刀 龍膽:りんどう りゅうたん
 404 長谷川かな女  願ひ事なくて手古奈の秋淋し 手古奈:てこな 葛飾(勝鹿)の真間に奈良時代以前に住んでいたとされる美しい女性の名
 405 長谷川かな女  時鳥女はものゝ文秘めて 
 406 日野草城  思ふこと多ければ咳しげく出づ 
 407 日野草城  先生はふるさとの山風薫る 
 408 日野草城  新涼やさらりと乾く足の裏 
 409 日野草城  おのれ照るごとくに照りて望の月 
 410 日野草城  高熱の鶴青空に漂へり 
 411 日野草城  わがいのちいよよさやけし露日和 
 412 日野草城  望の夜もともしび明く病みにけり 
 413 日野草城  草も樹もしづかに梅雨はじまりぬ 
 414 日野草城  新緑やかぐろき幹につらぬかれ 
 415 日野草城  春の宵妻のゆあみの音きこゆ 
 416 日野草城  山茶花やいくさに敗れたる国の 
 417 日野草城  ひと拗ねてものいはず白き薔薇となる 
 418 日野草城  毎日の景色が雨に濡れてゐる 
 419 日野草城  伊勢えびにしろがねの刃のすずしさよ 
 420 日野草城  をみなとはかかるものかも春の闇 
 421 日野草城  をさなごのひとさしゆびにかかる虹 
 422 日野草城  春眠や鍵穴つぶす鍵さして 
 423 日野草城  宝恵駕の妓のまなざしの来てゐたる 妓:こ
 424 日野草城  タイピストコップに薔薇をひらかしむ 
 425 日野草城  茅渟の海春の大潮みちにけり 茅渟:チヌ 黒鯛
 426 日野草城  サイダーのうすきかをりや夜の秋 
 427 日野草城  白南風や化粧にもれし耳の陰 
 428 日野草城  春の夜や檸檬に触るる鼻の先 
 429 星野立子  露の世の間に合はざりしことばかり 
 430 星野立子  芝焼いてまこと賢き月出でぬ 
 431 星野立子  月の下死に近づきて歩きけり 
 432 星野立子  秋風のそこに見えをり音立てゝ 
 433 松本たかし  恐ろしき緑の中に入りて染まらん 
 434 松本たかし  久闊や秋水となり流れゐし 久闊:きゅうかつ 久しく会わないこと
 435 星野立子  下萌えぬ人間それに従ひぬ 
 436 星野立子  考へても疲るゝばかり曼珠沙華 
 437 星野立子  娘等のうかうかあそびソーダ水 
 438 星野立子  つんつんと遠ざかりけりみちをしへ 
 439 星野立子  蝌蚪一つ鼻杭にあて休みをり 蝌蚪:かと おたまじゃくし
 440 松本たかし  撫で下す顔の荒れゐる日向ぼこ 
 441 松本たかし  白焔の緑の緑や冬日燃ゆ 白焔:はくえん 焔:ほむら
 442 松本たかし  思ふどち紫苑の晴にうち集ひ 
 443 松本たかし  春潮の底とどろきの淋しさよ 
 444 松本たかし  預けある鼓打ちたし冬の梅 
 445 松本たかし  あたたかき深き空洞の炬燵かな 
 446 松本たかし  露涼し神も朝扉を開け給ふ 
 447 松本たかし  するすると涙走りぬ籠枕 
 448 松本たかし  一円に一引く注連の茅の輪かな 
 449 松本たかし  渋柿の滅法生りし愚かさよ 
 450 松本たかし  庖丁を取りて打撫で桜鯛 
 451 松本たかし  起ち上る風の百合あり草の中 
 452 松本たかし  鴨を得て鴨雑炊の今宵かな 
 453 松本たかし  くきくきと折れ曲りけり蛍草 
 454 松本たかし  我去れば鶏頭も去りゆきにけり 
 455 松本たかし  雨音のかさむりにけり虫の宿 
 456 松本たかし  十棹とはあらぬ渡しや水の秋 
 457 松本たかし  ひく波の跡美しや桜貝 
 458 松本たかし  一つづつ田螺の影の延びてあり 
 459 水原秋櫻子  朝寝せり孟浩然を始祖として 孟浩然:もうこうねん 唐代(盛唐)の代表的な詩人
 460 水原秋櫻子  蜻蛉うまれ緑眼煌とすぎゆけり  
 461 水原秋櫻子  山櫻雪嶺天に声もなし 
 462 水原秋櫻子  薔薇の坂にきくは浦上の鐘ならずや 
 463 水原秋櫻子  べたべたに田も菜の花も照りみだる 
 464 水原秋櫻子  伊豆の海や紅梅の上に波ながれ 
 465 水原秋櫻子  門とぢて良夜の石と我は居り 
 466 水原秋櫻子  この沢やいま大瑠璃鳥のこゑひとつ 
 467 水原秋櫻子  山茱萸にけぶるや雨も黄となんぬ 茱萸:ぐみ
 468 水原秋櫻子  狂ひつつ死にし君ゆゑ絵のさむさ 
 469 水原秋櫻子  雪渓をかなしと見たり夜もひかる 
 470 水原秋櫻子  白樺を幽かに霧のゆく音か 
 471 水原秋櫻子  むさしのの空真青なる落葉かな 
 472 水原秋櫻子  梨咲くと葛飾の野はとの曇り 
 473 水原秋櫻子  馬酔木より低き門なり浄瑠璃寺 
 474 中村汀女  菊白し独りの紅茶すぐ冷ゆる 
 475 中村汀女  聞き置くと云ふ言葉あり菊膾 
 476 中村汀女  白玉や人づきあひをまた歎き 
 477 中村汀女  滴りの思ひこらせしとき光る 
 478 中村汀女  次の子も屠蘇を綺麗に干すことよ 
 479 中村汀女  母我をわれ子を思ふ石蕗の花 
 480 中村汀女  夏帯やわが娘きびしく育てつつ 
 481 中村汀女  秋暑き汽車に必死の子守歌 
 482 中村汀女  たらちねの蚊帳の吊手の低きまま 
 483 中村汀女  夫と子をふっつり忘れ懐手 
 484 中村汀女  子を守りて母うつつなき飛燕かな 
 485 中村汀女  子等のものからりと乾き草枯るる 
 486 中村汀女  遠雷や睡ればいまだいとけなく 
 487 中村汀女  春泥に振りかへる子が兄らしや 
 488 中村汀女  春の海のかなたにつなぐ電話かな 
 489 中村汀女  咳をする母を見上げてゐる子かな 
 490 中村汀女  末の子が黴と言葉を使ふほど 
 491 中村汀女  肉皿に秋の蜂来るロッジかな 
 492 中村汀女  遠けれどそれきりなれど法師蝉 
 493 中村汀女  地階の灯春の雪ふる樹のもとに 
 494 中村草田男  旧景が闇を脱ぎゆく大旦 大旦:おおあした 元旦のこと
 495 中村草田男  厚飴割ればシクと音して雲の峰 
 496 中村草田男  いくさよあるな麦生に金貨天降るとも 
 497 中村草田男  膝に来て模様に満ちて春着の子 
 498 中村草田男  玉虫交る土塊どちは愚かさよ 
 499 富安風生  九十五齢とは後生極楽春の風 
 500 富安風生  朴枯葉枝と訣るる声耳に 訣るる:わかるる
 501 富安風生  春惜しむ心と別に命愛し 
 502 富安風生  月に執す五欲の外の慾をもて 
 503 富安風生  こときれてなほ邯鄲のうすみどり 邯鄲:かんたん 体はスズムシに似て細長く、淡黄緑色。山地の草の間に多い
 504 富安風生  狐火を信じ男を信ぜざる 
 505 富安風生  あはあはと富士容あり炎天下 
 506 富安風生  赤富士に露滂沱たる四辺かな 滂沱:坊うだ 雨が激しく降るさま
 507 富安風生  蟻地獄寂莫として飢ゑにけり 寂莫:じゃくまく ひっそりしていてさびしいこと せきばく
 508 富安風生  抱一の観たるたがごとく葛の花 
 509 富安風生  鮭あはれ老の手だれの簎を受く  簎:やす 長い柄の先に数本に分かれたとがった鉄の金具を付けた漁具
 510 富安風生  小鳥来て午後の紅茶のほしきころ 
 511 富安風生  つくらねど句は妻もすき波薐草 波薐草:ほうれんそう
 512 富安風生  虫の音も月光もふと忘るる時 
 513 富安風生  母の忌やその日のごとく春時雨 
 514 富安風生  走馬燈へだてなければ話なし 
 515 橋本多佳子  鵜舟に在りわが身の火の粉うちはらひ 
 516 橋本多佳子  一粒を食べて欠きたる葡萄の房 
 517 橋本多佳子  月一輪凍湖一輪光りあふ 
 518 橋本多佳子  嘆きゐて虹濃き刻を逸したり 
 519 橋本多佳子  炎天の梯子昏きにかつぎ入る 
 520 橋本多佳子  恋猫のかへる野の星沼の星 
 521 橋本多佳子  蟇をりて吾溜息を聴かれたり 
 522 橋本多佳子  夫恋へば吾に死ねよと青葉木菟 
 523 橋本多佳子  凍蝶を容れて十指をさしあはす 
 524 橋本多佳子  蛇を見し眼もて弥勒を拝しけり 
 525 橋本多佳子  泣きしあとわが白息の豊かなる 
 526 橋本多佳子  母と子のトランプ狐啼く夜なり 
 527 橋本多佳子  雪しまきわが喪の髪はみだれたり 
 528 波多野爽波  茎といふ大事なものやさくらんぼ 
 529 波多野爽波  ついて来る人はと見れば吾亦紅 
 530 波多野爽波  冬ざるるリボンかければ贈り物 
 531 波多野爽波  大根の花まで飛んでありし下駄 
 532 波多野爽波  骰子の一の目赤し春の山 骰子:さいころ
 533 波多野爽波  山吹の黄を挟みゐる障子かな  
 534 波多野爽波  あかあかと屏風の裾の忘れもの 
 535 波多野爽波  蓑虫にうすうす目鼻ありにけり 
 536 波多野爽波  沈丁の花をじろりと見て過ぐる 
 537 波多野爽波  箒木が箒木を押し傾けて 
 538 波多野爽波  吾を容れてはばたくごとし春の山 
 539 波多野爽波  鶏頭に手を置きて人諭すごとし 
 540 波多野爽波  芹の水照るに用心忘れた鶏 
 541 波多野爽波  白粉花吾子は淋しい子かも知れず 
 542 波多野爽波  美しやさくらんぼうも夜の雨も 
 543 波多野爽波  シーソーの尻が打つ地の薄暑かな 
 544 波多野爽波  本開けしほどのまぶしさ花八手 
 545 波多野爽波  誰よりも早く秋めく心かな 
 546 能村登四郎  一条のけむり入りたる夏氷 
 547 能村登四郎  霜掃きし箒しばらくして倒る 
 548 能村登四郎  夏掛けのみづいろといふ自愛かな 
 549 能村登四郎  紐すこし貰ひに来たり雛納め 
 550 能村登四郎  初あかりそのまま命あかりかな 
 551 能村登四郎  削るほど紅さす板や十二月 
 552 能村登四郎  ほたる火の冷たさをこそ火と言はめ 
 553 能村登四郎  鶏頭をあさき夢見のあと倒す 
 554 能村登四郎  くらがりに水が慄へる星まつり 慄:おののく 恐怖や興奮などで身体が震える思いをする。身体をわななかせる。戦慄する
 555 能村登四郎  一月の音にはたらく青箒 
 556 能村登四郎  今日の雲けふにて亡ぶ蟻地獄 
 557 能村登四郎  ふかく妻の腕をのめり炭俵 
 558 種田山頭火  泊まることにしてふるさとの葱坊主 
 559 種田山頭火  あるけばかっこういそげばかっこう 
 560 種田山頭火  雲がいそいでよい月にする 
 561 種田山頭火  あるけばきんぽうげすわればきんぽうげ 
 562 種田山頭火  けふもいちにち誰も来なかったほうたる 
 563 種田山頭火  やっぱり一人がよろしい雑草 
 564 種田山頭火  雪へ雪ふるしづけさにをる 
 565 種田山頭火  水音しんじつおちつきました 
 566 種田山頭火  笠へぽっとり椿だった 
 567 種田山頭火  酔うてこほろぎと寝てゐたよ 
 568 種田山頭火  しみじみ食べる飯ばっかりの飯である 
 569 種田山頭火  すべってころんで山がひっそり 
 570 種田山頭火  どうしようもないわたしが歩いてゐる 
 571 種田山頭火  まっすぐな道でさみしい 
 572 種田山頭火  けふもよく働いて人のなつかしや 
 573 竹下しづの女  梅を供す親より背より子ぞ哀し 
 574 竹下しづの女  枯葦の辺に夜の路をうしなひぬ 
 575 竹下しづの女  梅おそし子を病ましむる責ふかく 
 576 竹下しづの女  悲憤あり吐きし西瓜の種子黒く 
 577 竹下しづの女  たゝまれてあるとき妖し紅ショール 
 578 竹下しづの女  苔の香のしるき清水を化粧室にひき 化粧室:トワレ トイレ
 579 竹下しづの女  汝に告ぐ母が居は藤真盛りと 
 580 竹下しづの女  たゞならぬ世に待たれ居て卒業す 
 581 竹下しづの女  幾何を描く児と元日を籠るなり 
 582 竹下しづの女  吾がいほは豊葦原の華がくり 
 583 竹下しづの女  母の名を保護者に負ひて卒業す 
 584 竹下しづの女  ことごとく夫の遺筆や種子袋 
 585 竹下しづの女  カルタ歓声が子を守るわれの頭を撲って 歓声:どよみ
 586 竹下しづの女  今年尚其冬帽乎惜大夫 夫:づま 
 587 竹下しづの女  手袋とるや指輪の玉のうすぐもり 
 588 鷹羽狩行  秋風や寄れば柱もわれに寄り 
 589 鷹羽狩行  露の夜や星を結べば鳥けもの 
 590 鷹羽狩行  初富士の浮かび出でたるゆふべかな 
 591 鷹羽狩行  しづけさに加はる跳ねてゐし炭も 
 592 鷹羽狩行  地球またかく青からむ龍の玉 
 593 鷹羽狩行  生きすぎて忘れらるるな山椒魚 
 594 鷹羽狩行  麦踏みのまたはるかなるものめざす 
 595 鷹羽狩行  赤きもの獅子舞となる山河かな 
 596 鷹羽狩行  来世には天馬になれよ登山馬 
 597 鷹羽狩行  秋風や魚のかたちの骨のこり 
 598 鷹羽狩行  壁画とも天井画とも梅仰ぐ 
 599 鷹羽狩行  湖といふ大きな耳に閑古鳥 湖:うみ
 600 鷹羽狩行  ひとすぢの流るる汗も言葉なり 
 601 鷹羽狩行  紅梅や枝々は空奪ひあひ 
 602 鷹羽狩行  虹なにかしきりにこぼす海の上 
 603 鷹羽狩行  一対か一対一か枯野人 
 604 鷹羽狩行  天瓜粉しんじつ吾子は無一物 
 605 鷹羽狩行  花椿われならば急流へ落つ 
 606 鷹羽狩行  畦を違えて虹の根に行けざりし 
 607 高野素十  たんぽぽのサラダの話野の話 
 608 高野素十  山吹の一重の花の重なりぬ 
 609 高野素十  双鷹の次第に遠く舞ひ連るる 
 610 高野素十  燃えてゐる火のところより芒折れ 
 611 高野素十  雪片のつれ立ちてくる深空かな 
 612 高野素十  漂へる手袋のある運河かな 
 613 高野素十  まっすぐの道に出でけり秋の暮 
 614 高野素十  早乙女の夕べの水にちらばりて 
 615 高野素十  朝顔の双葉のどこか濡れゐたる 
 616 高野素十  揚雲雀時時見上げ憩ひけり 
 617 高野素十  小をんなの髪に大きな春の雪 
 618 高野素十  野に出れば人みなやさし桃の花 
 619 高野素十  探梅や枝のさきなる梅の花 
 620 鈴木真砂女  曳くよりも曳かるる船の寒さかな 
 621 鈴木真砂女  人あまた泳がせて海笑ひけり 
 622 鈴木真砂女  鍋物に火のまわり来し時雨かな 
 623 鈴木真砂女  冬に入る己励ます割烹着 
 624 鈴木真砂女  花冷や箪笥の底の男帯 
 625 鈴木真砂女  愛憎のかくて薄るる単衣かな 
 626 鈴木真砂女  鯛は美のおこぜは醜の寒さかな 
 627 鈴木真砂女  湯豆腐や男の歎ききくことも 
 628 鈴木真砂女  黴の宿いくとせ恋の宿として 
 629 鈴木真砂女  白桃に人刺すごとく刃を入れて 
 630 鈴木真砂女  冬の夜の海眠らねば眠られず 
 631 鈴木真砂女  降る雪やこゝに酒売る灯をかゝげ 
 632 鈴木真砂女  アパートがつひの棲家か木の芽和 
 633 鈴木真砂女  夏帯や運切りひらき切りひらき 
 634 鈴木真砂女  つきつめてものは思わじさくらもち 
 635 鈴木真砂女  すみれ野に罪あるごとく来て二人 
 636 鈴木真砂女  大夕焼わが家焼きたる火の色に 
 637 鈴木真砂女  罪障のふかき寒紅濃かりけり 
 638 鈴木真砂女  生簀籠波間に浮ける遅日かな 生簀籠:いけすかご
 639 鈴木真砂女  初凪やものゝこほらぬ国に住み 
 640 芝不器男  山の蚊の縞あきらかや嗽 嗽:くちすすぐ
 641 芝不器男  一片のパセリ掃かるゝ暖炉かな 
 642 芝不器男  秋の日をとづる碧玉数しらず 
 643 芝不器男  さきだてる鵞鳥踏まじと帰省かな 
 644 芝不器男  うまや路や松のはろかに狂ひ凧 
 645 芝不器男  寒鴉己が影の上におりたちぬ 
 646 芝不器男  ふるさとの幾山垣やけさの秋 
 647 芝不器男  凩や倒れざまにも三つ星座 
 648 芝不器男  ふるさとを去ぬ日来向ふ芙蓉かな 
 649 芝不器男  風鈴の空は荒星ばかりかな 荒星:木枯らしの吹く夜の星
 650 芝不器男  向日葵の蕊を見るとき海消えし 蕊:しべ
 651 芝不器男  汽車見えてやがて失せたる田打かな 
 652 芝不器男  新藁や永劫太き納屋の梁 
 653 西東三鬼  五月の海へ手垂れ足垂れ誕生日 
 654 西東三鬼  眼帯の内なる眼にも曼珠沙華 
 655 西東三鬼  くらやみに蝌蚪の手足が生えつつあり 
 656 西東三鬼  まくなぎの阿鼻叫喚をひとり聴く まくなぎ:人の顔などにまつわりつく小さな羽虫
 657 西東三鬼  中年や独言おどろく冬の坂 
 658 西東三鬼  北風はしり軽金属の街を研ぐ 北風:きた
 659 西東三鬼  不眠症魚は遠い海にゐる 
 660 西東三鬼  水枕ガバリと寒い海がある 
 661 三橋鷹女  寒満月こぶしをひらく赤ん坊 
 662 三橋鷹女  千の虫鳴く一匹の狂ひ鳴き 
 663 三橋鷹女  うつうつと一個のれもん姙れり 
 664 三橋鷹女  藤垂れてこの世のものの老婆佇つ 
 665 三橋鷹女  荒海にめしひて鯛を愛すかな 
 666 三橋鷹女  巻貝死すあまたの夢を巻きのこし 
 667 三橋鷹女  老鶯や泪たまれば啼きにけり 
 668 三橋鷹女  はるかな嘶き一本の橅を抱き 嘶き:いななき 橅:ぶな
 669 三橋鷹女  落ちてゆく炎ゆる夕日を股挟み 
 670 三橋鷹女  絶壁に月を捕へし捕虫網 
 671 三橋鷹女  青葡萄天地ぐらぐらぐらぐらす 
 672 三橋鷹女  かなしびの満ちて風船舞ひあがる 
 673 三橋鷹女  白骨の手足が戦ぐ落葉季 
 674 三橋鷹女  老いながら椿となつて踊りけり 
 675 三橋鷹女  女一人佇てり銀河を渉るべく 
 676 三橋鷹女  炎天を泣きぬれてゆく蟻のあり 
 677 三橋鷹女  月見草はらりと地球うらがへる 
 678 三橋鷹女  千万年後の恋人へダリヤ剪る 
 679 三橋鷹女  百日紅何年後は老婆たち 
 680 三橋鷹女  笹鳴に逢ひたき人のあるにはある 
 681 三橋鷹女  詩に痩せて二月渚をゆくはわたし 
 682 三橋鷹女  暖炉炊く夫よタンゴを踊ろうか 
 683 三橋鷹女  天地ふとさかしまにあり秋を病む 
 684 三橋鷹女  初嵐して人の機嫌はとれませぬ 
 685 森澄雄  古人みな詠ひつくせり秋の風 
 686 森澄雄  存へて浮世よろしも酔芙蓉 
 687 森澄雄  子が食べて母が見てゐるかき氷 
 688 山口青邨  俯向きて鳴く蟋蟀のこと思ふ 蟋蟀:こおろぎ
 689 山口青邨  月とるごと種まくごとく踊りけり 
 690 山口青邨  一樹にして森なせりけり百千鳥 
 691 山口青邨  願事のあれもこれもと日は永し 
 692 山口青邨  外套の裏は緋なりき明治の雪 
 693 山口青邨  人それぞれ書を読んでゐる良夜かな 
 694 山口青邨  をみなへし又きちかうと折りすゝむ 
 695 黒田杏子  那須颪男体颪ちちとはは 颪:おろし
 696 一茶  心からしなのゝ雪に降られけり 
 697 阿部みどり女  いつしかに野の花の香の暖かし 
 698 阿部みどり女  曼珠沙華暗き太陽あるごとし 
 699 阿部みどり女  紫陽花の夕の藍に羽織りけり 
 700 阿部みどり女  群千鳥渚に下りてより見えず 
 701 阿部みどり女  その後の一句もなくて梅白し 
 702 阿部みどり女  物言わぬ独りが易し胡瓜もみ 
 703 阿部みどり女  菜の花や岩を曲れば怒濤見ゆ 
 704 阿部みどり女  すこやかな五体を没し芒折る 
 705 阿部みどり女  紫苑ゆらす風空になかりけり 紫苑:しおん キク科シオン属の多年草。別名は鬼の醜草、十五夜草、思い草
 706 阿部みどり女  菖蒲湯にうめる水白く落ちにけり 
 707 黒田杏子  涅槃図をあふるる月のひかりかな 
 708 黒田杏子  一介の老女一塊の山櫻 
 709 黒田杏子  雪を聴くきのふのわれを聴くごとく 
 710 黒田杏子  この世にて稲妻に馴れ旅に馴れ 
 711 黒田杏子  一の橋二の橋ほたるふぶきけり 
 712 黒田杏子  花に問へ奥千本の花に問へ 
 713 黒田杏子  ガンジスに身を沈めたる初日かな 
 714 黒田杏子  かよひ路のわが橋いくつ都鳥 
 715 久保田万太郎  なまじよき日当りえたる寒さかな 
 716 久保田万太郎  あはゆきのつもるつもりや砂の上 
 717 久保田万太郎  日向ぼっこ日向がいやになりにけり 
 718 久保田万太郎  パンにバタたっぷりつけて春惜む 
 719 久保田万太郎  したゝかに水を打ちたる夕ざくら 
 720 金子兜太  三日月がめそめそといる米の飯 
 721 阿部みどり女  鶯餅帰心うながす置時計 
 722 高野素十  母の忌のこの日の冬日なつかしむ 
 723 星野立子  梅見婆はしょれる裾の派手模様 
 724 渡辺水巴  我れ去れば水も寂しや谷の梅 
 725 森澄雄  黒松の一幹迫る寒灯火 
 726 加藤楸邨  蟻の顔に口ありて声充満す 
 727 加藤楸邨  天の川わたるお多福豆一列 
 728 尾崎放哉  なんと丸い月が出たよ窓 
 729 尾崎放哉  わが顔ぶらさげてあやまりにゆく 
 730 尾崎放哉  こんなよい月を一人で見て寝る 
 731 大野林火  いのち長きより全きをねがふ寒 
 732 大野林火  風立ちて月光の坂ひらひらす 
 733 大野林火  あをあをと空を残して蝶別れ 
 734 飯田龍太  かるた切るうしろ菊の香しんと澄み 
 735 飯田龍太  父母の亡き裏口開いて枯木山 
 736 飯田龍太  雪の峯しづかに春ののぼりゆく 
 737 阿波野青畝  鮟鱇の涎出すぎてすべりけり 
 738 阿波野青畝  一点は鷹一線は隼来 
 739 阿波野青畝  舟と舟ぶつかる瓜の市場かな 
 740 阿波野青畝  狐火やまこと顔にも一くさり 
 741 阿部みどり女  陽炎の見えぬ齢に順じけり 
 742 阿部みどり女  たんぽぽや日向日陰の三角形 
 743 阿部みどり女  雲とゆく草の径は秋早く 
 744 阿部みどり女  梅林へ梅林へ私は裏山へ 
 745 阿部みどり女  菊の雨菊をうつしてたまるのみ 
 746 阿部みどり女  打ちあけしあとの淋しさ水馬 
 747 古沢大穂  本漁ればいつも青春肩さむし 
 748 小川軽舟  死ぬときは箸置くやうに草の花 
 749 田中裕明  空へゆく階段のなし稲の花 
 750 成田千空  雪よりも白き骨これおばあさん 
 751 星野立子  炬燵の間母中心に父もあり 
 752 富安風生  死を怖れざりしはむかし老の春 
 753 阿部みどり女  九十をいつか越えたりいつか夏 
 754 阿部みどり女  九十の端を忘れ春を待つ 端:はした
 755 芝不器男  あなたなる夜雨の葛のあなたかな 
 756 中村草田男  麦の道今も坂なす駈け下りる 
 757 長谷川かな女  秋風や皆子を負へる兵の妻 
 758 内藤鳴雪  元日や一系の天子不二の山 
 759 子規  天の川敵陣下に見ゆる哉 
 760 金子兜太  きょお!と喚いてこの汽車はゆく新緑の夜中 
 761 森澄雄  蛤や少し雀のこゑを出す 
 762 森澄雄  亀鳴くといへるこころをのぞきゐる 
 763 森澄雄  みづうみに鰲を釣るゆめ秋昼寝 鰲:ごう おおがめ
 764 森澄雄  西国の畦曼珠沙華曼珠沙華 
 765 森澄雄  寒鯉の雲のごとくにしづもれる 
 766 森澄雄  雪国に齢ふるぶ気も狂はずに 
 767 石田波郷  たばしるや鵙叫喚す胸形変 胸形変:きょうぎょうへん
 768 石田波郷  西日中電車のどこか摑みて居り 
 769 石田波郷  吹きおこる秋風鶴をあゆましむ 
 770 石田波郷  バスを待ち大路の春をうたがはず 
 771 石田波郷  秬焚や青き螽を火に見たり 秬焚:きびたき 螽:いなご
 772 石田波郷  秋の暮業火となりて秬は燃ゆ 秬:きび
 773 加藤楸邨  死にゆく猫に真青の薄原 
 774 加藤楸邨  農夫の葬おのがつくりし菜の花過ぎ 
 775 加藤楸邨  巻尺ひとつほぐれをどれり冬畳 
 776 加藤楸邨  野の中の何に口あき寒鴉 
 777 加藤楸邨  鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる 
 778 加藤楸邨  秋の風跫音うしろより来たる 
 779 加藤楸邨  かなしめば鵙金色の日を負ひ来 
 780 西東三鬼  恋猫と語る女は憎むべし 
 781 西東三鬼  昇降機しづかに雷の夜を昇る 
 782 西東三鬼  百舌に顔切られて今日が始まるか 
 783 西東三鬼  中年や遠くみのれる夜の桃 
 784 西東三鬼  大旱の赤牛となり声となる 大旱:おおひでり
 785 西東三鬼  枯蓮のうごく時きてみなうごく 
 786 西東三鬼  哭く女窓の寒潮縞をなし 哭く:なく
 787 西東三鬼  緑陰に三人の老婆わらへりき 
 788 久保田万太郎  東京の雁ゆく空となりにけり 
 789 久保田万太郎  古暦水はくらきを流れけり 
 790 久保田万太郎  枯野はも縁の下までつゞきをり 
 791 久保田万太郎  秋の暮汐にぎやかにあぐるなり 
 792 尾崎放哉  春の山のうしろから烟が出だした 
 793 尾崎放哉  墓のうらに廻る 
 794 尾崎放哉  障子の穴から覗いて見ても留守である 
 795 尾崎放哉  障子あけて置く海も暮れきる 
 796 尾崎放哉  足のうら洗へば白くなる 
 797 尾崎放哉  漬物桶に塩ふれと母は産んだか 
 798 尾崎放哉  自らをののしり尽きずあふむけに寝る 
 799 尾崎放哉  傘干して傘のかげある一日 
 800 尾崎放哉  一日物云わず蝶の影さす 
 801 尾崎放哉  ねそべって書いて居る手紙を鶏に覗かれる 
 802 尾崎放哉  つくづく淋しい我が影よ動かして見る 
 803 尾崎放哉  鏡屋の鏡に今朝の秋立ちぬ 
 804 尾崎放哉  提灯が向うから来る夜霧かな 
 805 尾崎放哉  木の間より釣床見ゆる青葉かな 
 806 尾崎放哉  水打って静かな家や夏やなぎ 
 807 尾崎放哉  一斉に海に吹かるる芒かな 
 808 山頭火  もりもりもりあがる雲へ歩む 
 809 山頭火  月夜、あるだけ米をとぐ 
 810 山頭火  どっかりと山の月おちた 
 811 山頭火  空も人も時化る 時化る:しける
 812 山頭火  生死の中の雪ふりしきる 生死:しょうじ
 813 虚子  鴨の中の一つの鴨を見てゐたり 
 814 金子兜太  青年鹿を愛せり嵐の斜面にて 
 815 金子兜太  原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫あゆむ 
 816 金子兜太  白い人影はるばる田をゆく消えぬために 
 817 金子兜太  暗闇の下山くちびるをぶ厚くし 
 818 金子兜太  墓地も焼跡蝉肉片のごと樹々に 
 819 金子兜太  独楽廻る青葉の地上妻は産みに 
 820 金子兜太  朝日煙る手中の蚕妻に示す 
 821 金子兜太  死にし骨は海に捨つべし沢庵噛む 
 822 金子兜太  水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る 
 823 金子兜太  被弾のパンの樹島民の赤児泣くあたり 
 824 金子兜太  木曽のなあ木曽の馬並び糞る 糞る:まる
 825 金子兜太  蛾のまなこ赤口なれば海を恋う 
 826 金子兜太  霧の夜の吾が身に近く馬歩む 
 827 金子兜太  曼珠沙華どれも腹出し秩父の子 
 828 金子兜太  山脈のひと隅あかし蚕のねむり 蚕:こ
 829 金子兜太  裏口に線路が見える蚕飼かな 
 830 金子兜太  白梅や老子無心の旅に住む 
 831 子規  黒キマデニ紫深キ葡萄カナ 
 832 子規  花ならば爪くれなゐやおしろいや 
 833 子規  朝皃や我に写生の心あり 朝皃:あさがお
 834 子規  桃太郎は桃金太郎は何からぞ 
 835 子規  桃の如く肥えて可愛や目口花 
 836 子規  病床の我に露ちる思ひあり 
 837 子規  土一塊牡丹いけたる其下に 
 838 子規  筍哉虞美人草の蕾哉 
 839 子規  糞つまりならば卯の花くだしませ 
 840 子規  竹の子も鳥の子も只やすやすと 
 841 子規  鳥の巣も頼むや子安観世音 
 842 子規  鳥の親に中将湯や糞づまり 
 843 子規  菜種の実はこべらの実もくはずなりぬ 
 844 子規  活きた目をつゝきに来るか蠅の声 
 845 子規  蝸牛の頭もたけしにも似たり 
 846 子規  酒を煮る男も弟子の発句よみ 
 847 子規  昼蚊帳に乞食と見れば惟然坊 惟然坊:いぜんぼう 美濃国関里の産、広瀬氏安通が舎弟
 848 子規  罌栗さくや尋ねあてたる智月庵 罌栗:ひなげし
 849 子規  義仲寺へ乙州つれて夏花摘 
 850 子規  季斯伝を風吹かへす昼寝かな 
 851 子規  青嵐去来や来ると門に立つ 
 852 子規  村と話す維駒扇子取って傍に 維駒:これこま 黒柳維駒:くろやなぎこれこま
 853 子規  俳諧の仏千句の安居哉 安居:あんご それまで個々に活動していた僧侶たちが、一定期間、1か所に集まって集団で修行すること
 854 子規  団扇二ツ角と雪とを画きけり 
 855 子規  柿の花散るや仕官の暇無き 
 856 子規  粛山のお相手探し昼一斗 粛:しゅく 静まり返っているさま
 857 子規  破団扇夏も一炉の備哉 
 858 子規  この祭いつも卯の花くだしにて 
 859 子規  風板引け鉢植の花散る程に 
 860 子規  三尺の鯛生きてあり夏氷 
 861 子規  千本が一時に落花する夜あらん 
 862 子規  雀の子忠三郎も二代かな 
 863 子規  鳥の子の飛ぶ時親はなかりけり 
 864 子規  陽炎や日本の土に殯 殯:かりもがり 日本古代の葬制。本格的に埋葬するまでの間,遺体をひつぎに納めて 喪屋内に安置または仮埋葬して近親の者が諸儀礼を尽くして幽魂を慰める習俗
 865 子規  糸瓜サヘ仏ニナルゾ後ルゝナ 
 866 子規  朝顔ノシボマヌ秋トナリニケリ 
 867 子規  朝皃ヤ絵ノ具ニジンデ絵ヲナサズ 朝皃:あさがお
 868 子規  芙蓉ヨリモ朝顔ヨリモウツクシク 
 869 子規  棚ノ糸瓜思フ処ヘブラ下ル 
 870 子規  真心ノ虫喰ヒ栗ヲモラヒケリ 
 871 子規  秋ノ蝉叩キ殺セト命ジケリ 
 872 子規  ツクヅクト我影見ルヤ虫ノ声 
 873 子規  秋海棠ニ鋏ヲアテルコト勿レ 
 874 子規  柿くふも今年ばかりと思ひけり 
 875 子規  蛇のから何を力に抜け出でし 
 876 子規  九月蝉椎伐ラバヤト思フカナ 
 877 子規  人問ハゞマダ生キテ居ル秋ノ風 
 878 子規  馬の尾に仏性ありや秋の風 
 879 子規  マハシ著ケテ子供角力ノ並ビケリ 著ケ:つけ 並ビ:ならび
 880 子規  病人の息たえだえに秋の蚊帳 
 881 子規  氷噛ンデ毛穴ニ秋ヲ覚エケリ 
 882 子規  風吹いて花びら動く牡丹かな 
 883 子規  故郷に桃咲く家や知らぬ人 
 884 子規  蛇穴を出て人間を恐れけり 
 885 子規  鯉の背に春水そゝぐ盥かな 盥:たらい
 886 子規  氷解けて水の流るゝ音すなり 
 887 子規  春深く腐りし蜜柑好みなり 
 888 子規  年玉を並べて置くや枕もと 
 889 子規  大三十日愚なり元日猶愚也 
 890 子規  六尺の緑枯れたる芭蕉哉 
 891 子規  乹鮭に目鼻つけたる御姿 乹鮭:乾鮭
 892 子規  書きなれて書きよき筆や冬籠 
 893 子規  凍筆をホヤにかざして焦しけり 
 894 子規  薔薇の香の粉々として眠られず 粉々:ぷんぷん
 895 子規  竹の子の子の子もつどふ祝哉 
 896 子規  鐘の音の輪をなして来る夜長哉 
 897 子規  春雨や裏戸明け来る傘は誰 
 898 子規  伏して念ふ雛の如き御契 念ふ:おもふ
 899 子規  長病の今年も参る雑煮哉 
 900 子規  大なるやはらかき柿を好みけり 
 901 子規  五女ありて後の男や初幟 
 902 子規  さそはれし妻を遣りけり二の替 二の替:にのかわり 京坂で、歌舞伎の陰暦正月の狂言のこと
 903 子規  初暦五月の中に死ぬ日あり 
 904 子規  門松やわがほとゝぎす発行所 
 905 子規  芭蕉忌や芭蕉に媚びる人いやし 
 906 子規  着心の古き頭巾にしくはなし 
 907 子規  兎角して佝僂となりぬ冬籠 佝僂:くる クル病
 908 子規  おしろいは妹のものよ俗な花 
 909 子規  この頃の蕣藍に定まりぬ 蕣:あさがお
 910 子規  唐辛子からき命をつなぎけり 
 911 子規  ひとり寝の紅葉に冷えし夜もあらん 
 912 子規  月さすや碁をうつ人のうしろ迠 
 913 子規  ある僧の月も待たずに帰りけり 
 914 子規  水無月の山吹の花にたとふべし 
 915 子規  紅梅の莟のやうな拳哉 莟:つぼみ
 916 子規  藍壺に泥落したる燕哉 
 917 子規  豆腐屋の来ぬ日はあれど納豆売 
 918 子規  萩芒来年逢んさりながら 
 919 子規  萩咲て家賃五円の家に住む 
 920 子規  柿くはゞや鬼の泣く詩を作らばや 
 921 子規  ごてごてと草花植し小庭哉 
 922 子規  日まわりの花心がちに大いなり 
 923 子規  御仏に供へあまりの柿十五 
 924 子規  つり鐘の帯のところが渋かりき 
 925 子規  鹿を放ち向ふの森に鳴かせばや 
 926 子規  秋の雨荷物ぬらすな風ひくな 
 927 子規  見に行くや野分のあとの百花園 
 928 子規  吉原の太鼓聞こゆる夜寒哉 
 929 子規  林檎くふて又物写す夜半哉 
 930 子規  山風や桶浅く心太動く 
 931 子規  君を送りて思ふことあり蚊帳に泣く 
 932 子規  長安の市に日永し売ト者 
 933 子規  雪の家に寝て居ると思ふ許にて 
 934 子規  雪ふるよ障子の穴を見てあらば 
 935 子規  小夜時雨上野を虚子の来つゝあらん 
 936 子規  しぐるゝや蒟蒻冷えて臍の上  蒟蒻:こんにゃく 臍:へそ
 937 子規  三十にして我老いし懐炉哉 
 938 子規  垢すりになるべく糸瓜愚也けり 
 939 子規  行く年を母すこやかに我病あり 
 940 子規  三日月の頃より肥ゆる子芋哉 
 941 子規  酒のあらたならんよりは蕎麦のあらたなれ 
 942 子規  砂の如き雲流れ行く朝の秋 
 943 子規  我心蠅一匹に狂わんとす 
 944 子規  連翹に一閑張の机かな 連翹:れんぎょう 一閑張:いっかんばり 紙漆細工のこと
 945 子規  今年又花散る四月一二日 従弟の藤野古白の命日
 946 子規  春雨のわれまぼろしに近き身ぞ 
 947 子規  春風にこぼれて赤し歯磨粉 
 948 子規  朧夜や女盗まんはかりごと 
 949 子規  なにがしの忌日ぞけふは冴え返れ 
 950 子規  今年はと思ふことなきにしもあらず 
 951 子規  元日の人通りとはなりにけり 
 952 子規  舞ひながら渦に吸はるゝ木葉哉 
 953 星野立子  遊びたる昨日は遠き二日かな 
 954 一茶  水鳥のどちにも行かず暮にけり 
 955 星野立子  この旅の思ひ出波の浮寝鳥 
 956 山口青邨  冬の田の鴉たたかふさま遠く  
 957 山口青邨  吸入の妻が口開けあほらしや 
 958 飯田蛇笏  芋喰ふや大口あいていとし妻 
 959 子規  初芝居見て来て曠著いまだ脱がず 曠著:曠着 はれぎ
 960 子規  我病みて冬の蠅にも劣りけり 
 961 子規  峠より人の下り来る吹雪哉 
 962 子規  煤払や神も仏も草の上 
 963 子規  馬の尻に行きあたりけり年の市 
 964 子規  漱石が来て虚子が来て大三十日 
 965 子規  摺小木やおおつごもりを掻き廻す 
 966 子規  ほろほろとぬかごこぼるゝ垣根哉 
 967 子規  夏の穂のこゝを叩くなこの墓を 
 968 子規  啼きながら蟻にひかるゝ秋の蝉 
 969 子規  我死なで君生きもせで秋の風 
 970 子規  戸口まで送って出れば星月夜 
 971 子規  秋風や生きてあひ見る汝と我 
 972 子規  月の座や人さまさまの影法師 
 973 子規  月ならば二日の月とあきらめよ 
 974 子規  同じ事を廻燈籠のまはりけり 
 975 子規  秋三月馬鹿を尽して別れけり 
 976 子規  行く秋の我に神無し仏無し 
 977 子規  秋立てば淋し立たねばあつくるし 
 978 子規  若竹や豆腐一丁米二合 
 979 子規  柿の花土塀の上にこぼれけり 
 980 子規  鳴きやめて飛ぶ時蝉のみゆる也 
 981 子規  夏山にもたれてあるじ何を詠む 
 982 子規  夕立ちや砂に突き立つ青松葉 
 983 子規  この二日五月雨なんど降るべからず 
 984 子規  絶えずしも白雲おこる氷室哉 
 985 子規  すゞみがてら君を送らんそこら迠 
 986 子規  夏羽織われをはなれて飛ばんとす 
 987 子規  うれしさに涼しさに須磨の恋しさに 
 988 子規  短夜を眠がる人の別れかな 
 989 子規  短夜や一寸のびる桐の苗 
 990 子規  菜の花の四角に咲きぬ麦の中 
 991 子規  行かばわれ筆の花散る処まで 
 992 子規  出陣や桜見ながら宇品迠 
 993 子規  春の月枯木の中を上りけり 
 994 子規  大国の山皆低きかすみ哉 
 995 子規  日本のぽっちり見ゆる霞哉 
 996 子規  畑打ちよこゝらあたりは打ち残せ 
 997 子規  無病なる人のいたがる二日灸 
 998 子規  春や昔古白といへる男あり 
 999 子規  石手寺へまはれば春の日暮れたり 
 1000 子規  霜の夜や赤子に似たる猫の声 
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